『除染予算の半分以上を費やす「減容化施設」の暴走
―環境省公開資料の分析から見えてきた除染事業の実態』
を発表しました
『除染予算の半分以上を費やす「減容化施設」の暴走
―環境省公開資料の分析から見えてきた除染事業の実態』
執筆:筒井哲郎(原子力市民委員会)
和田央子(放射能ゴミ焼却を考えるふくしま連絡会)
青木一政(NPO市民放射能監視センター(ちくりん舎))
福島第一原発事故の「後始末」の費用は、「エネルギー白書2016年版」によれば、総額が22兆円で、その内訳は、福島第一原発の廃炉・汚染水対策費用が8兆円、賠償費用が8兆円、除染費用が6兆円とされています。除染費用の内、環境省が2018年3月までに支出した金額は、約3兆円(2兆9620億円)ですが、この内訳を調べたところ、環境省の公開資料から確認できた2013年度~2017年度の実績として、1兆2529億円以上が、「減容化施設」(数年で解体する仮設の焼却炉)の費用に充てられており、その期間の除染費用の54%を占めていることがわかりました。
必要性や効果の検証が不十分な除染に、すでに3兆円も支出していること自体が大きな問題ですが、さらに指摘すべきこととして、
・この焼却炉の設計容量等の合理性が疑わしく、過大な容量で設置し、ごく短期間で解体するようなものが多いこと、
・減容化と称して放射能に汚染した可燃物を焼却する際の放射能汚染対策が杜撰であること
・森林除染を兼ねたバイオマス発電が進められようとしていること
などから、本来、被災者のために使われるべき除染予算が、関連業者のビジネス・チャンスとして自己目的化し、肥大化していると言わざるを得ません。
私たち原子力市民委員会は、福島原発事故をふまえ、原発ゼロ社会を構築するための現実的な政策提言などに取り組む市民シンクタンクとして、2013年4月から活動してきました。現在進行している除染や「減容化施設」の動きは、汚染物質の管理の問題のみならず、税金の浪費につながるものであり、見直しが必要だと考え、今回のレポートをまとめたものです。