「声明:新たな東京電力救済策・原子力発電会社救済策は正当化できない」
を発表、意見交換会を開催しました
原子力市民委員会は2016年12月2日、「声明:新たな東京電力救済策・原子力発電会社救済策は正当化できない」を発表、衆議院第一議員会館にて、意見交換会を開催しました。
声明および発表・意見交換会の様子を掲載いたします。
【要旨】
座 長:吉岡 斉
座長代理:大島堅一、島薗 進、満田夏花
委 員:荒木田岳、大沼淳一、海渡雄一、
後藤政志、筒井哲郎、伴 英幸、
武藤類子
2016年9月に入って経済産業省は、新たに2つの審議会を設置した。経済産業省に置かれる「東京電力改革・1F問題委員会」(略称:東電委員会)と、同省の総合資源エネルギー調査会に置かれる「電力システム改革貫徹のための政策小委員会」(略称:貫徹委員会)である。前者は東京電力救済を目的としている。後者は東京電力のみならず、全ての原子力発電会社(旧電力9社および日本原子力発電、ならびに将来原子力発電所を保有する電力会社)の救済を目的としている。
2つの審議会は、2016年内にも、新たな東京電力救済策と、原子力発電会社救済策の骨子を定めることを目指している。もしそれが実現すれば、2つの深刻な事態が発生することになる。
第1に、2011年3月の福島原発事故に係る事故対策費の支払いの大半を、事故対策活動を続けるために今後追加されていく支払いも含めて、国民負担に転嫁する仕組みが整うこととなる。ここで重要なのは電気料金(当面は新電力も含めた電気料金、2020年からは送電会社の託送料金)への上乗せによって東京電力救済資金が調達されることである。これにより国会の承認なしに際限なく値上げしていくことが可能となる。
第2に、東京電力だけでなく全ての原子力発電会社が抱える原子力発電固有のコストを、同じように将来追加される支払いも含めて電気料金に上乗せし、国民負担に転嫁する仕組みが整うこととなる。当面予定されているのは廃炉コストだけだが、この仕組みを他の費目にも当てはめていくことは簡単である。今後も次々と巨額の国民負担を求める事案が浮上してくると見込まれる。しかも国会の承認なしに、新たな国民負担を、際限なく追加していくことが可能となる。
たとえば使用済み核燃料再処理コストについては、2006年より再処理等積立金が電気料金に上乗せされ、現在までに5兆円余りが積み立てられたが、すでに半分以上が日本原燃に注入され、しかも日本原燃の再処理実績はほとんどない(425トン)。六ヶ所再処理工場では新規制基準適合のための工事が続いており、今後の再稼働の見通しも立っていない。この状態が続けば、再処理が進まぬまま積立金が枯渇し、新たな国民負担が求められる事態となる恐れが濃厚である。たとえ将来再処理が廃止されても、今までの国民負担は返還されない。
今まで述べてきた2つの原子力発電会社救済策が導入されれば、福島原発事故の対策コストと原子力発電固有のコストを、簡単に国民に転嫁するメカニズムが完成することとなる。つまり単に今回限りの救済策ではなく、永続的な救済策が導入されることに相当する効果をもつこととなる。こうした深刻な事態を踏まえて原子力市民委員会は、原子力発電にともなう国民の犠牲を最小限にとどめるため、2つの提案をしたい。
第1は、福島原発事故の対策費について、電気料金からの上乗せによる東京電力への追加注入の仕組みの導入を見送ることである。東京電力は、2011年の福島原発事故によって深刻な経営危機に陥ったが、同年6月の東京電力を債務超過にさせないという閣議決定にもとづき、手厚い政府主導の支援策により今日まで生き延びてきた。しかし早期に経営破綻させるべきだった。福島原発事故を引き起こした企業として3月期に債務超過に陥ることを防ぐ必要はない。東京電力延命という政府の努力目標を記載した2011年6月の閣議決定も見直す必要がある。なお東京電力を破綻処理しても支払えない事故対策コストが、国民負担となることは止むを得ない。東京電力や原子力関係者は、そのような結果をもたらす恐れのある原子力発電事業を進めたこと自体が誤りだったことを謝罪し、原子力発電廃止を決定すべきである。
第2は、原子力発電固有のコストは、数ある発電手段の中から原子力発電を選んだ電力会社が負担すべきである。今になって原子力発電コストが割高であることが明らかになったからといって、新電力会社に背負わせるべきではない。しかも原子力発電会社はすでに原子力発電施設解体引当金を積み立てている。廃炉コスト見積りが上昇した場合は、引当金の増額で対応するのが筋である。
声明の全文は以下よりご覧ください。
「声明:新たな東京電力救済策・原子力発電会社救済策は正当化できない」