先般、9月10日に、原子力規制委員会は、九州電力川内原子力発電所1・2号機について、新規制基準への適合性審査に「合格」とする審査書を決定した。また、原子力規制委員会そのものが9月19日に発足から2年を迎えている。これに際し、私たち原子力市民委員会は30日、別紙のとおり、2つの声明を発表し、あらためて川内原発の再稼働が容認できない理由を明確に示し、また、原子力規制委員会に対しては、その果たすべき本来の役割に立ち返るために根本から立て直すことが必要不可欠であることを示すこととした。
この2つの声明は互いに密接な関係にあるが、前者が原子力規制委員会という組織そのものの抱える全般的な機能障害を主題としているのに対し、後者は原子力規制委員会の今までの活動のひとつの集大成とも言える新規制基準への適合性審査に焦点を絞っている。両者を併せ読まれることによって、なぜ川内原発の再稼働を認めることが賢明ではないのかについて、深く理解していただけるものと信ずる。
「声明1:原子力規制委員会の存在意義が問われている」においては、再度、福島原発事故の教訓を以下の7点に整理した。
1 原発過酷事故が現実に発生し、取り返しのつかない被害をもたらしていること
2 福島第一原発が、原子炉の配置や施設の立地にも問題を抱えていたこと
3 事故に際して指揮管制通信システムが、深刻な機能障害を起こしたこと
4 現地本部が事故対策において無力だったこと
5 原発周辺地域における防災・減災システムが役に立たなかったこと
6 事故収束・事故被害修復が難航していること
7 3年半が経過した現在においても、事故原因について解明できていないこと
これに照らして、原子力規制委員会のこの2年間の動きが、いかに福島原発事故の教訓を無視したものとなっているかを論証した。
「声明2:原子力規制委員会が審査書を決定しても原発の安全性は保証されない」においては、新規制基準の根本的な「歪み」を具体的に示した。今回の川内原発の審査書決定は、安全の保証が出来ない原発に規制基準をクリアさせてしまうためのほとんど「詐術」といえる不適切な技法を組み合わせたものに過ぎないというのが私たちの結論である。
なお、声明には、別紙1として、声明2に関する詳細説明、別紙2として、川内原発の避難計画等の緊急時対応に関する原子力防災会議の「確認」の問題性についての解説を添付したので、あわせてご覧いただきたい。
2つの声明について納得できない論点、わかりにくい論点があれば、ぜひ原子力市民委員会宛にコメントを寄せていただきたい。私たちはそれに誠実に回答することにより、読者との対話のきっかけとするとともに、貴重なアドバイスとして受け止め、今後の活動に役立てていきたい。