『特定秘密保護法可決に際しての原子力市民委員会声明』を発表しました(2013/12/18)

2013年12月18日

特定秘密保護法可決に際しての原子力市民委員会声明

原子力市民委員会

・さる12月6日、臨時国会において、「特定秘密の保護に関する法律」(いわゆる特定秘密保護法)が可決成立した。この法律において、秘密指定される情報は安全保障、外交、「テロ対策」、特定有害活動に関するものとされているが、「特定秘密」の範囲や取り扱い等の重要な部分で、行政側の強い裁量が認められており、本来情報公開されるべき情報の公開が制限される危険性が指摘されている。

・原子力に関わる分野では、(特定秘密保護法が施行されていない)現状においても、電力会社や原子力規制行政における情報公開は極めて不十分であり、市民や研究者、技術者、あるいは国会議員等からの正当な情報公開請求に対しても、情報が秘匿されたり、「黒塗り」の資料だけが開示されたりすることがたびたびあった。
 プルトニウム利用に関する情報は核物質防護を根拠に広範に秘密とされてきた。耐震設計の詳細に関する情報は企業秘密とされてきた。施設内の機器の詳細な機能・図面なども、「テロ対策」を理由に秘密とされてきた。

・福島原発事故の際には、メルトダウンの事実、SPEEDIの情報、原子炉内部の詳細な損傷状況、汚染水に関する情報、福島県の健康管理調査に関するデータなど、広範な情報が適切に公表されず、市民の生命・安全に対する重大な危険をもたらした。
 11月25日に福島で実施された地方公聴会では、与野党推薦の7人の意見陳述者全員が、情報隠しが市民の生命・安全に危険をもたらしたこと、東京電力による情報隠しが内部告発によって明らかにされてきたことなどに言及し、反対ないし慎重な意見を述べた。衆議院での強行採決は、この地方公聴会の翌日であった。
原子力市民委員会は、このような福島原発事故の経験をふまえ、原子力政策のあり方、とりわけ原子力の安全性をめぐっては、様々なステークホルダーに開かれた場で徹底的な再検証を行うことが極めて重要だと考えている。その大前提として、現在でも不十分であった原子力に関わる情報公開が、現状より後退することがあってはならないということを強く訴える。

・原子力市民委員会としては、2014年春に、「脱原子力政策大綱」をまとめることを目指しているが、原子力政策における情報公開や、政策決定プロセスにおける市民参加、合意形成のあり方自体が、極めて重要な論点だと考えている。これらの論点は、情報公開等の個別の議論にとどまらず、私たちの目指す民主的な社会において、その推進が監視社会をもたらしかねない原子力に関わる技術を許容できるのか、あるいは、根源的に民主主義と相容れないものなのか、という本質的な問題として位置づけられるべきである。

・原子力市民委員会としても、その内容および制定手続の双方に大きな問題のある特定秘密保護法案の制定を容認することはできず、今後の特定秘密保護法に関わる政治過程を慎重に見守り、安全性を核とする原子力に関する情報が的確に公開される体制づくりのために、積極的な提言を重ねていきたい。

以 上

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