2025年2月21日
声明:第7次エネルギー基本計画は
安全で環境保全的なエネルギー社会への転換を妨げる
原子力市民委員会
今日の世界的課題は、エネルギーシステムを危険で環境破壊的なものから安全で環境保全型のものへと根本的に転換させることにある。福島第一原発事故を経験した日本は、原子力発電を速やかに廃止し、同時に、気候危機に対応するための本格的なエネルギー転換を進める必要がある。石破政権が2025年2月18日に閣議決定した「第7次エネルギー基本計画」は、この方向性とは正反対のものになっている。 第7次エネルギー基本計画には、以下のような許されざる重大な問題がある。 第1に、第7次エネルギー基本計画は、福島第一原発事故を発生させた国の責任や、原発事故被害の深刻さを無視している。被害者に十分な補償がされておらず、他方で国民を危険な状態におき続けているという現実を反映していない。国が原子力開発を無闇に進めたことにより、原子力の安全性が軽視され、福島原発事故の発生を招いたことは明白である。2024年1月に発生した能登半島地震では、福島原発事故から13年経っていたにもかかわらず、実効的な避難体制すらできていないことが露呈した。 第2に、脱炭素の名の下で、再エネとともに、原子力を「最大限活用」することを定めた。これは、福島原発事故後の自公政権で方針とされてきた「原発依存度のできる限りの低減」を反転させるものである。政府は2040年度の発電電力量に占める割合を、原子力2割、火力3〜4割などとしている。原子力と火力の維持は、再エネの導入をその分引き下げ、安全で環境保全型のエネルギーシステムへの移行を妨げる。 第3に、原発に対する新たな支援策(事業環境整備・市場環境整備)についての詳細を明記した。これは、国民負担をさらに増加させる。「事業環境整備」は、これまで原子力に対して多額の資金支援を行うときに使われてきた政策用語である。そのための資金源は電気料金/託送料金と税金である。国民に一層の負担を強いる原子力支援は許されない。 第4に、再処理を中核とする核燃料サイクル路線の継続を決定した。しかし、六ヶ所再処理工場は1993年の建設開始以来、32年が経過しても竣工できていない。核燃料の再処理は、非常に危険な工程であり、かつ技術的にも解決困難な課題を抱えている。加えて、総事業費が年々膨れあがるばかりで経済性がまったく無い。こうした現実を直視し、一刻も早く核燃料サイクル路線を放棄する必要がある。 以上のように、第7次エネルギー基本計画は、今後も原子力を維持し、国民に危険と負担を強いるものとなっている。同時に、原発(および火力)を維持することで再エネ・省エネを中心とする革新的エネルギーシステムへの移行をも妨げる。このことは、日本の産業基盤が、世界からさらに遅れをとる結果を導くことを意味する。第7次エネルギー基本計画は、3年後の次回改定を待たず、速やかに見直さなければならない。
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