現在の日本の原子力政策では、原発で使用した核燃料をすべて再処理し、プルトニウムを分離して核燃料として再利用することになっています。これが「核燃料サイクル」(政府の用語では「燃料リサイクル」)という方針ですが、現実には、再処理工場(青森県六ヶ所村)は当初の完成予定(1997年)から27年、着工からは30年以上たった現在でもなお稼働の見通しが立たず、各地の原発では使用済み燃料プールの収容量が限界に近づいています。
海外に委託した再処理で生じた高レベル放射性廃棄物(ガラス固化体)が日本に返還されてきて六ヶ所村に「一時貯蔵」されていますが、その最終処分地も決まっていません。プルトニウム燃料(MOX)を必要とする高速増殖炉「もんじゅ」も度重なる事故と不具合で廃炉となって久しく、海外での再処理で分離されたプルトニウムの他の原発での利用も限られていて、ひとことで言えば「核燃料サイクル」計画はすでに破綻しています。
このような現状にもかかわらず、GXの名のもとに「原発回帰」が強引に進められようとしていますが、それには、各地の原発にすでに溜まっている使用済み核燃料がネックとなります。再処理工場が当分動かないとなれば、これまでのように六ヶ所村へ運ぶというわけにいきません。それどころか、再処理の見通しが立たなければ、これまで六ヶ所村に運び込んだ燃料棒を各原発に戻せ、という話にもなります。
こうした状況のなか、来月(2024年11月)に事業開始が予定されている青森県むつ市の「リサイクル燃料備蓄センター」(使用済み核燃料の中間貯蔵施設)は、どのように位置づけられるのでしょうか。すでに東電の柏崎刈羽原発からは、この施設への使用済み核燃料の輸送が始まっています(※参考1)。建前としては、再処理工場に運ぶ途中の「一時貯蔵」という体裁ですが、その立地の背景を詳しく見ていくと、日本の原子力政策において放射性廃棄物問題がひたすら先送りされ続けてきたことを象徴する施設であることがわかります(※参考2)。のみならず、核燃サイクル計画の空転にもかかわらず政府が打ち出した「原発回帰」のための〝地ならし〟をする役割まで帯びてしまっているという点に注意が必要です。
今回のオンライントークでは、この中間貯蔵施設について、立地の経過、さまざまな核燃サイクル施設をかかえる青森県の立場、新潟県・福井県の原発状況との絡み、そして中央政府がむりやり押し進めようとしている「原発の最大限活用」とどうつながっているか、といった一連の問題を整理し、解説したいと思います。 お誘い合わせのうえ、ぜひ御参加ください。
参考1:共同通信 2024年9月24日配信/毎日新聞掲載(動画あり) 「東電、柏崎刈羽原発の使用済み燃料を搬出 国内初、青森の施設へ」https://mainichi.jp/articles/20240924/k00/00m/040/116000c
共同通信 2024年9月26日配信 「使用済み燃料きょう搬入 国内初、青森の貯蔵施設へ」https://www.47news.jp/11537315.html
参考2:FoE Japan 連続オンライントーク(第8回)2024年6月17日 満田夏花「出口の見えない核ごみ政策」 阪上武「むつ中間貯蔵施設~原発稼働と核ごみのゆくえ」 https://foejapan.org/issue/20240617/18042/
日 時: 2024年10月29日(火)17:00~18:00
場 所: オンライン開催(zoom)
プログラムと出席者:
●「原発再稼働や稼働延長の〝地ならし〟としての使用済み核燃料〝中間貯蔵〟」 /茅野恒秀(信州大学人文学部 准教授、原子力市民委員会 委員・ 政策調査部会共同部会長)資料
●質疑応答・意見交換
(この企画は、後日Youtubeで公開します。Zoomのウェビナー形式で開催し、ご質問やご意見は当日の質疑応答(Q&A)もしくは、後日メール・FAXなどで受けつけます)
申し込み: 下記よりお申込みください。
https://us02web.zoom.us/webinar/register/WN_fGkq5oQFTteHW00Cq85QQw
※ 案内が届かない場合は、email◎ccnejapan.com(◎は@に変えてください)までお知らせください。
主 催: 原子力市民委員会
お問い合わせ:email◎ccnejapan.com[◎を@に変えてください] TEL 03-6709-8083