『今こそ知りたい エネルギー・温暖化政策Q&A(2023年版) ―政府GXによる原発回帰は、国民負担が増すだけで、 脱炭素にもエネルギー安定供給にもつながらない』
作 成: 原子力市民委員会 執筆者: 明日香壽川 協力者: 大島堅一、松久保 肇
現在、ウクライナ情勢によるエネルギー危機、エネルギー安定供給、電力料金抑制、気候変動対策などを理由として、「GX(グリーントランスフォーメーション)」の名のもと、日本政府は原子力発電(原発)への回帰を鮮明にしています。こうした動きは、発電と温室効果ガス削減の両方でより経済合理性が大きい再生可能エネルギー(再エネ)や省エネの拡大を妨げることによって国民の経済的負担や原発に関わるリスクを増大させるものであり、同時に気候変動対策を遅らせることにもなります。
現時点での原発と再エネの新設の場合の発電コストおよび温室効果ガス排出削減コストの格差は数倍~数十倍であり、再エネの新設は原発の運転延長さえよりも安くなりつつあります。特に日本では東京電力福島第一原子力発電所事故(以下、福島原発事故)後の多額の安全対策費などが電力会社の財務状況を圧迫しています。一方、日本ではこれまで、そして今でも多くの資金が税金や電気代として国民に見えにくいかたちで原発につぎ込まれており、それは再エネの比ではありません。日本では省エネのポテンシャルも過小評価されています。
本Q&A集では、原発、再エネ、省エネ、電気自動車、政府の「GX実現に向けた基本方針(GX基本方針)」などに関わる典型的な疑問に答えるかたちで、政府のエネルギー・温暖化政策、特に2023年2月10日に閣議決定されたGX基本方針および同方針に基づいたGX関連法案の経済合理性を検証します。 (本文「はじめに」より)
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【目次】 第1章 原発は安い? ■質問1 原発がないと電気代は高くなりませんか? 政府や電力会社は原発が再稼働すれば電力料金が下がると言っています。毎月の電気代に含まれる再エネ賦課金の額も大きく負担を感じます。 ■質問2 世界的にも原発に回帰しているのではないでしょうか? EUもEUタクソノミーなどで原発推進を決めたのではありませんか? ■質問3 原発はCO2を出さないのですか? クリーンあるいはグリーンなのですか? ■質問4 原発新設、あるいはすでにある原発を使う方が温暖化対策に有効ではないですか? ■質問5 原発推進の英国は、原発のおかげでCO2排出量が減っているのではないですか? 一方、脱原発を表明しているドイツはエネルギー転換で失敗していて、電気をフランスから輸入しているのではありませんか? ■質問6 小型原子炉や核融合炉は有望な技術と聞きましたが、違うのでしょうか? ■質問7 原発は飛行機が突っ込んでも大丈夫だと聞きました。本当でしょうか? 福島第一原発のような、想定外の事故の危険性がある原発は他にもあるのでしょうか? ■質問8 原発があるから日本では再エネが普及しない、というのは本当でしょうか? ■質問9 なぜ米国、日本、フランス、イギリスなどは国策として原発を進めるのでしょうか? 将来核兵器を持てるようにするため、というのは本当でしょうか? 第2章 再エネは使えない? 省エネはもう無理? ■質問10 太陽光発電は、雨の日、雪の日、夜などは発電できないはずです。このように再エネは不安定なので、停電したり、電気を使うことをがまんしたりしなければならなくなるのですか? また、送電網の整備に余計なお金がかかるのではないですか? どうやって再エネ100%が可能になるのでしょうか? ■質問11 メガソーラーは自然破壊につながるのではないですか? メガソーラーがなければ、太陽光発電は増やせないのではありませんか? ■質問12 再エネの日本経済へのメリットは何ですか? 日本での太陽光発電で儲かるのは中国など海外の企業だけではないですか? 太陽光パネルの製造時に人権問題が絡んでいるのではありませんか? ■質問13 太陽光パネルは製造時に大量のエネルギーを使うのではないですか? 太陽光パネルの廃棄問題や電磁波の健康への影響があるのではないでしょうか? ■質問14 日本は省エネ先進国ではないのですか? 第3章 電気自動車は問題あり? ■質問15 電気自動車で電力需要が増大するのではないですか? ■質問16 ライフサイクルで考えると電気自動車はCO2排出削減につながらないのではありませんか? 第4章 政府GX基本方針は問題だらけ? ■質問17 GX基本方針における投資分野・内容、GX経済移行債、成長志向型カーボンプライシング、GX推進機構の問題点とは何ですか? 参考文献 |