原子力市民委員会 特別レポート7
『減容化施設と木質バイオマス発電
――肥大化する除染ビジネス、拡大するリスク』
特別レポート7『減容化施設と木質バイオマス発電――肥大化する除染ビジネス、拡散するリスク』
主執筆: 筒井 哲郎
執筆協力:和田 央子(放射能ゴミ焼却を考えるふくしま連絡会)
青木 一政(NPO 法人市民放射能監視センター(ちくりん舎))
川井 康郎(原子力市民委員会原子力規制部会、プラント技術者の会)
2011年3月に発生した福島第一原発事故以来、被災地の除染工事が大々的に行われてきた。その工事によって、福島県内を中心とする放射能汚染地域には汚染土壌を詰めたフレコンバッグがうずたかく積み上げられていた。それらの汚染土壌は、2018年ころから中間貯蔵施設などへ運び込まれて、幹線道路からはほとんど見えなくなっている。
除染廃棄物はまず減容化施設へ送られている。減容化施設とは基本的には仮設焼却炉であり、その排気口からは放射性物質を同伴するばいじんが放出される。その飛散は除染の目的に逆行している。汚染土壌は、原則として中間貯蔵施設に保管して30年後に県外に搬出するとしているが、現実に受け入れ先が見つからず、国(環境省)は、その代替措置として汚染土壌の大半を資源化・再利用して保管土壌を期限以内に大幅に減量することを目論んでいる。また、森林除染は基本的に行わず、木質バイオマス発電を推進することによる「減容化」を図っており、事実上放射能を帯びた燃料と化している。
これらの事実は除染という事業の本来の目的を大きく減殺し、当該地域の住環境を大きく損ねる結果を予測させるが、メディア報道などを見ても、このことはほとんど知らされていない。2018年3月に環境省によって発行され『除染事業誌』の目次には、見出し項目が257件あるが、そのうち「減容化」と記した項目は1件だけで、その該当ページで記載されているのは、除染現場における「破砕」「チップ化」「圧縮・梱包」という物理的な減容作業にとどまり、仮設焼却炉による「減容化施設」の記述はない。わずかに、「減容化の方法には、圧縮や破砕のような物理的な減容や、焼却や溶融、放射性セシウムが付着している粘土などの微細粒子を分別して減容する分級などがある」という記載があるのみである。しかしながら、仮設焼却炉を用いた減容化施設は福島県内に20件余り建設され、2013年から供用されている。そのための費用が除染関連予算として支出された総額に占める割合は、2018年度までの集計を見ると50%を超えている。
本書ではまず、とりわけ重要と思われる減容化施設と木質バイオマス発電施設に焦点を絞って、その実態を関係の方がたにご報告することをめざした。これらの施設の資料は容易に入手できず、記述が十分とは言い難い。しかし、事柄の重大さに鑑み、広く情報提供することを優先した。
(本文「はじめに」より)
(7月20日に発表した報告書に、一部、微修正を加えた版を8月26日に掲載しました。正誤表)
■冊子版(A4判並製 68頁)をご希望の方は、1冊800円(送料込み)でご送付いたします。
代金を下記の郵便振替口座までお振り込みください。
郵便振替口座 : 00170-0-695728 加入者名 : 原子力市民委員会
■振込用紙には、必ず下記の事項をご記入ください。
1)お名前 2)ご住所 3)電話番号
4)ご希望の書籍のタイトル 5)注文の冊数 6)E-mailアドレス(任意)
【目次】 |